トルクってなあ~に?~補講編~ - 初心者のためのシーバスロッド

トルクってなあ~に?~補講編~

 26,2015 22:00
前回の記事

http://hakataseabasslure.blog.fc2.com/blog-entry-441.html

にて、ロッドのトルクとは具体的に何を指しているものなのか、その推察を述べてみました。

今回はその補足と、もう一歩踏み込んだ考察をしてみます。





本来の意味、つまりは厳密な意味での「トルク」とは「瞬発力」のことです。

この「本来の意味、つまりは瞬発力」の”トルク”をロッドに当てはめてみると、「トルクがあるロッド」とは魚がフッキングした瞬間からグワァーッと復元する力が強引に発動するロッドに他なりません。
つまり即座に反発するロッドのことであって、バイトの瞬間に「弾く」とか、やりとりの最中に「よくバラす」とか形容されるロッドを指すことになります。
そういうことならば、それは「パワーがある硬いロッド」であって、「トルクがあるロッド」だと形容する必要はありません。

市中で使われる「トルクのあるロッド」とは、何かを犠牲にして得た能力を賞賛しているものでないようなので、「瞬発力」とは違う性質のようです。
というわけで、ロッドの形容詞として使われる「トルク」とは、本来の意味の「瞬発力」ではない、と考えるのが論理的思考といえるでしょう。










前回の記事では、「シーバルロッドにおけるトルク」とは、その意味するところは「坂道を苦もなく昇る車」「自動車のローギア」のイメージであり、ひいては助走がない(慣性がない)状態からの力持ちの度合いだ、と述べました。
口語での「トルク」とは、自動車、特にその低速域でのパワフルネスをイメージされているのです。



「本来の意味でのトルク=つまりは瞬発力そのものではない説」を補強する重大な証拠があります。




トルクとは本来、回転に生じる、ねじりの力ですから、「回転数」と「回転を効率よく力に変換・伝達するギアセッティング」とは切っても切れない関係にあります。



どういうことかというと・・・



本来の意味でのトルク=瞬発力とは、その力の表現方法(味付け・具現化)において

・どの回転数においても満遍なく出現する「フラットなトルク」、いわゆる、パワーバンドが幅広く全域で薄くパワーが出る味付け



・パワーバンドが狭い、特定の回転域でドカンとパワーが出るピーキーな味付け

この2種類に必ず別れるはずです。




ですが、ロッドは(何度も言うとおり)回転しないので、この分類が発生しません。

後者、車でいうと「中低速のトルクの太さ=立ち上がり加速の良さ」を連想させる記述しか存在しません。

何故ならば前者の「フラットなトルク」とは、雑魚の負荷でもランカーが掛ける負荷でも平等に同じ性質の反発をするという意味になり、ロッドの美徳を賞賛していることにならないからです。
「フラットなトルク特性を持つシーバスロッド」が意味するところは、雑魚には過剰・大物には復元力が足りずにノサれるということになります。


そいうわけで


シーバスロッドにおける「トルクがある」という形容は、車でいう「立ち上がりの加速の良さ・力持ちの具合」であり、それが意味するところはバットが限界まで曲がってから発揮する、粘り強い復元力の強さを指し、褒め称える形容詞としての使用であることが明らかだと言えます。

急激に発動する力(つまりは瞬発力)の出現の形容ではないのです。










ここまで、ロッドのトルクについて考えていると、ふと気が付きました。













ひょっとして、そうかな、と。













なにがひょっとしてかというと・・・








トルクがあるロッドだと形容したがるのは、レングスが短くてパワーが小さいロッドではないかと。







具体的にいえば、90ML以下、特に80~90レングスのLパワーが多いのではないかと、そう直感的に閃きました。

思い立って調べてみると・・・案の定、出るわ出るわ・・・





メーカーA 8ft台のLパワーロッド
今までの軽快さとは相反するトルクを生みだし、激流を縦横無尽に走る獲物を制御。

メーカーB 8ft台のLパワーロッド
そのトルク感は比較対象が存在しません。

メーカーC 7ft台のロッド

トルクトルクトルクトルクトルクパワートルクパワー・・・(全体的にトルクとパワーを連呼)





このように、レングスが短くパワーが小さいロッドほど、メーカーが公式に「トルク」という言葉を多用している傾向が強いのです。

バット部からのフルベンドが起こりやすく、バットのリフティングパワーをダイレクトに感じやすいロッドほど、「トルク」という言葉で形容されているのです。


そこで大切なのは、絶対的なリフティングパワーの有無ではありません。


(リフティングパワーでいえば、ヒラスズキロッドの11ftMH~Hが絶対的に強いに決まっている・・・が、それらは「パワーがある」とはいわれても「トルクに富む」なんて形容は滅多にされない)

リフティングパワーそのものより、ロッドの存在感、その復元力の機能をフィジカルに強く感じるか否かが「トルクがある」と形容されるかされないかの境界線なでないのか。と気が付きました。

慌てて各メーカーのロッドの謳い文句(キャッチコピー)を調べていくと・・・・

長くてパワーのあるロッドは魚の引きを長いブランクで満遍なく吸収してしまうので、バットの手元に近い部位から折れ曲がることが滅多に起きにくく、それが理由で「トルクがある」とは形容されにくい傾向があるのではないかと思いました。
9.6ft以上の長さがあるロッドで「トルクがある」と形容されている場合は、「パワー」と「トルク」の言葉の混同が高まる傾向があり、実に興味深い発見です。











そうです


トルクがある、という言葉は







ロッドと使用者の一体感を指し示す尺度でもあるようです。







これは、ほぼ間違い無いと思います。


自分は時折、ロッドの性質を形容する言葉として「エモーショナルな」という表現を選んで使っています。



emotional



感情的・情緒的という意味ですが、わかりやすくいうと、感覚的に自分の腕と手の延長線上にあるような一体感をもたらしてくれるロッドのことです(不思議とシマノとダイワにはこの要素が著しく少ない気がします)。

確かに

「おい、この魚は今すげー力で走っているぞ!気をつけろ、踏ん張れ!!」という感じに、使用者に活き活きとした興奮を伝えてくれるのは、よく曲がる短いロッドです。バットの曲がりがそのダイレクト感を伝えてくれます。




「トルクがある」という形容は、復元力の強弱・リフティングパワーの強弱より、この操作者とロッドの一体感を表現している傾向が強いのではないでしょうか?

一般的に、93以上のレングスがあるシーバスロッドは、その長さが七難を隠してくれます。
「逃さず獲る」ためには長さが大切であることは間違いない事実ですが、同時に原始的興奮(便利で楽なオートマに対して、操作する喜びを与えてくれるマニュアル)を消してしまうのではないか、とも言えるのです。

そういう感覚的指標の一つに「トルク」という表現が位置するようになっているのではないでしょうか。

逆に言えば、「パワーがある」と言わずに、あえて「トルクがある」と形容されているならば、そのロッドと操作者の接続感覚のダイレクト感を強調しているわけです。
「トルクがある」という表現がなされているならば、「そのロッドの釣り易さ」を伝えているものではなく、「そのロッドでおこなう釣りの趣き深さ」を伝えていることになります。玄人志向であることが伝わってくるニュアンスですね。

つまり、「トルクがある」というロッドのもう一つの解釈方法として

かならずしもロッドの純機能を示しているものではない

という見方ができるわけです。








※注※

「初心者のための~」

というシリーズですが、ロッドに関してはある一定以上の経験を有する人ではないと、理解が難しい表現が含まれています。
特に「トルク」に関しては、ランディングまでの魚とのやりとりを「イメージ」で具現化できないとチンプンカンプンになることは間違いないので、「トルク」とは「ロッドがバッキバキに限界まで曲がっても、魚に負けずに寄せる力」と、シンプルに覚えてください。

ロッドは曲がらないと働かないのです。
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Comment 2

2015.02.04
Wed
00:26

メタボックス #-

URL

いつもブログ読んで勉強させて頂いているシーバス初心者です。

今回のトルクに関する記事大変勉強になりました。
私自身もトルクについて調べてみたところ、下記のブログがヒットしました。
こちらのブログではトルクや粘り、張り、パワーについて統合的に説明してくださっていますが、正しいのでしょうか?
私は竿を使い比べた経験があまりないので、あぁと思っても間違っているのかもしれないと思い、ぼらおさんの意見も伺いたいです。

http://ameblo.jp/shunn1124/entry-11981124052.html

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2015.02.05
Thu
22:17

ぼらお #-

URL

かなりスルドイ考察だと思います。
ソルトではなく淡水の方のようですが、正直いってここまで理論整然とロッドについて語っている文章はweb上では初めて見ました。

失礼ですし、お節介かもしれませんが、その記事については

「支点・力点・作用点」の「支点の大切さの観点」

これを念頭において読まれると、理解しやすいと思います。
かくいう自分は、3回目か4回目の読み直しでなんとか理解できました・・・・




尚、余談というか、この記事への付け足しになりますが

「トルクという言葉でロッドを形容するということ」

これはアメリカのバスフィッシングにその起源があるのでは・・・と、勝手に思っていましたが、ほぼ間違いなく日本で産まれた表現方法のようです。

英語ではトルクという言葉は極めて厳密に適用され、ロッドのネジレに関する極めて専門的・技術的な話しか出てきません。
日本のオリジナルである、「ロッドの力強さの表現方法」としての「トルク」は、その定義が存在しないことになりますね。

定義が存在しないということは、良くも悪くも「曖昧に使っていい」ということでもあります。
よって、表現者の裁量(あるいは解釈)でその意味するところが違っていたとしても、「それは間違っている!!」と指摘するのは野暮ということかもしれません。

ただ、個人的には、明らかに「パワー」とは一線を画す表現方法として確立されつつある言葉なので、使う側も読む側も「誤用・混同」を避け、「その言葉がイメージするるところの共有化」を進めてもらいたいと思っています。


たとえば、ワインやウイスキーには
「ナッツのような~」とか
「ベリー(果実)を思わせる~」とか
「オレンジの~」とか
様々な表現方法があり、共通言語として「フレイバー」の表現を行えるわけです。

ワインやウイスキーの味が言葉で表現できる。
まだ飲んだことが無い人にどういう酒なのか伝えることが出来る。
それならば、きっとフィッシングロッドも同じことが出来るはず。
そういう観点から、ロッドを言葉にするという事業を進めて行きたいと思います。

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