ロッドのブランクというものを真剣に考える① - 初心者のためのシーバスロッド

ロッドのブランクというものを真剣に考える①

 08,2016 07:18
この記事ではシーバスロッドのブランク、特にカーボンブランクの基本を勉強します。

主に動画鑑賞とその解説を軸に進めていきたいと思います。



動画に移る前に、カーボンブランクの基礎知識を少し・・・


ご存知のように、精密機器であるリールは事実上2社しか現実的な選択肢がなく「寡占状態である」といってもいいくらいですが、ロッドは大きければダイワやシマノのような釣具界の「巨人」から、小さければヤマガブランクスやGクラフトのような「山奥の畑や林の中の零細」まで、それどころか生産設備をもたないような会社まで、様々メーカーが存在しています。

それは何故かと言うと

・それなりの投資と経営規模は必要だが、最新鋭のハイテク機材は不要だし数百人の従業も不要

・原材料である素材(ハイテク分野)の研究開発は不要(金銭で購入することができる)

・生産設備を持たずとも生産設備を所有する会社に作ってもらうことが可能


この3点に集約されると思います。

カーボンロッドのブランクメイキングは、ハイテクの「素材系ギョーカイ」でもなければ「大規模工業」でもありません。
どちらかというと、ローテクの「家内制手工業」に近いでしょう。一番のポイントである「原材料=カーボンシート」は、それを本業としている他社から仕入れるわけで、カーボンシートの研究も生産も開発も釣具界には無縁なので基礎研究力の高さはそれほど要求されないからです。
「カーボン屋」といわれれば凄そうな感じがしますが、素材を買って加工しているという点をみれば靴屋とか鞄屋と同じ仲間です。
メーカーのパンフレットを始めとする宣伝を読んでみると「独自のカーボン技術が云々」なんてフレーズがよく登場しますが、それは全部ウソです。



ウソで~す。



日々、我々アホなアングラーを騙すことに全精力を注いでいるアホな釣具メーカーごときが、カーボンファイバー技術のような最先端科学の領域のR&Dなんて出来るわけないじゃないですか。
彼らがいう「独自のカーボン技術」は、お金だして買ったカーボンシートを加工する技術です。
それだけです。
まんざらウソ100%というわけではないですが、当然、各ロッドメーカーは「独自のレシピ」でロッドを作るわけですから、その表現方法だと自動的に全てのロッドメーカーが「独自のカーボン技術」を持つわけです。
拍子抜けしますよね?

じゃあその原材料となる素材・・・カーボンマテリアルはどこから来るのかというと・・・素材屋からです。
東レとか三菱レイヨンとかです。
つまり、素材の段階では各メーカーは平等ともいえるわけですね。

ここでもう既に気がついた方もいると思いますが、東レなり三菱レイヨンなりから同じ素材を売ってもらえるなら、中国だろうが韓国だろうが台湾だろうが日本だろうが、あとは加工技術と品質管理の差しかなく、その加工にしたって管理にしたってカーボン技術に関わる多くの日本企業がその上記3カ国(+タイ・ベトナム・マレーシア)に生産拠点を長年展開しているわけで、その差は殆ど無いに等しい(実際は等しくないわけですが・・・)ことになるでしょう。

ここを見誤ると

日本製=いいカーボン=いいロッド
海外製=ダメなカーボン=ダメなロッド

という、二十年前の感覚でしかロッドを見ることができなくなります。

勘違いしてはいけませんが、日本はモノづくりにおいては「グローバライゼーション」に負けた敗残兵なのです。
今後、日本がナンバーワンの工業国になることもなければ、日本の製品がナンバーワンの品質としてステータスを持ち続けることもありません。
もっとストレートにいうと国産であることに信仰心を持ち続けるのは「情弱」であるということです。
(釣具なんて、どこをどうみたって今でも世界一の品質なのにそれを武器にできない間に、日本の下請けとしてノウハウを蓄積してきたアジア諸国が振り向けば後ろにいて、日本の品質には到底及ばないものの、グローバルな視点においては「十分な品質を安価で提供できるレベルにある」という、いつかどこかでみたデジャブなわけですよ(苦笑)

ただし、日本の釣具メーカーの海外製品といっても
A)日本工場のノウハウをそのまま持ちだしている日系資本の「いい海外製」
B)現地資本工場の下請けに作らせているだけの「ビミョ-な海外製」
二種あることは留意すべきで、その辺はやはり「日本製」の持つ安心感・・・存在意義が残されているところですね。
あと、釣具は「嗜好品」でもあるので、高級になればなるほど「どこで作られたか」にも商業的価値が出てくるようになります・・・ソマリアで作られたロールスロイスなんて誰も乗りたくないし、北朝鮮で作られたフェラガモの靴なんて誰も履きません。




話が脱線しましたが、これが近年における釣竿業界。

ロッドも例外ではなく、日本は負けたのです。

シーバスロッド業界に限っていえば、自社生産拠点でブランクを作ることができる能力を持つ会社・・・所謂「自社窯」とか「窯元」とよばれるメーカーは数えるほどしか残っていません。

・ダイワ
・シマノ
・ガマカツ
・テンリュウ
・オリムピック
・宇崎日新
・ヤマガブランクス
・ゼナック
・Gクラフト
・ロッドコム(ダイコーの残党)

世に聞こえる国内生産メーカーはこれだけ。
ダイワとシマノはごく一部のハイエンドのみが国産なので、日本で年間に販売されるシーバスロッドの総数からその国産率を計算すると、国産ロッドはおそらく凄まじいほどの「少数派」になると思います。
しかも、そのハイエンドにしたって近年においては徐々にですが海外製の割合が増えてきました。
量はすでに「海外産>国産」ですが、質の面においても国産と海外産の差が縮まっているということになります。
全国釣竿公正取引協議会なんかが「釣竿白書」的なものを書いて、この辺の事情をおおやけにしてくれたら面白いと思うのですが・・・

では上記以外のロッドメーカーはどうやって作っているの?ということになりますが、それは自社窯持ちとか、窯元と呼ばれる上述のメーカーに作ってもらう(要するにOEMと呼ばれるものです)か、海外の現地資本の工場に発注するか(これもOEMとか海外OEM呼ばれるべきでしょう・・・APIAなんかがコレ)、自力で出資して海外で工場を立ち上げて「海外自社窯持ち(メジャークラフトが唯一コレに該当する模様)」になるかのいずれかでしょう。
海外の現地資本工場というのは、元を辿れば大抵は過去に日本メーカーと取引があってそこでノウハウを学んだり技術指導があったり、あるいは日本の海外工場で勤めていた人が現地で独立したりしたケースが殆どだと思います。
「日本で焼いて貰ったブランクを海外に持って行って組み立てしてもらう(海外で焼いて貰ったブランクを日本で組み立てる、というこもありえる)」というような複雑なケースも存在します。
その場合は

ブランクを焼いた国を Made in XXXX と表示してよく
ブランクを組み立てた国を Assembled in XXXX と表示していいようになるようです(両方の表示も可)

台湾のブランク屋の例だと:

日本の素材屋からカーボンシートを仕入れ

台湾の工場で窯でブランクを焼き

組み立て加工はせずにそのまま日本へ向けて輸出する

こんなフクザツなブランクも現在進行形で日本のシーバスロッドマーケットにて活躍(?)しているみたいです。

このように、カーボンロッドに対する「国産信仰」は過去のものとなり幻想となりつつあります。
(それでもやっぱりmade in Japanの響きが良く、選べるならばついつい求めてしまうものです)



ここまで、日本の釣具メーカーには技術がないだの、日本は終わっただの、なんだかとっても酷い言いようになっていますが、違うんです。
日本の釣具メーカーにはカーボン素材の開発技術などは備わっていませんが、カーボン素材を使って釣りに最も適したテイストを表現する技術が備わっているんです。よく考えれば、これがロッドにおけるコア技術ですよね。

日本の釣りを表現するには日本人の釣り人が関わるしか方法がありません。

その意味では「釣りが好きな技術系のにいちゃん」「釣りが好きな職人のおっちゃん」「何に使う道具かよくわからないけど指示どうり淡々と仕上げるおばちゃん」がいる限り、日本のロッドメイキングは一定の域において安泰なのかもしれません。

何がいいたいかというと、ロッドメーカーが素材技術を「独自」のものであるかのように吹聴するよりは、シーバスと対決するためにどのようなフィーリングに仕上げたのか、何故その方向性のロッドを作ったのか、その中身や苦労を語ってもらいたいということです。

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Comment 1

2016.01.09
Sat
00:40

ルーミス #-

URL

非常に興味深い

続編が非常に楽しみです!


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