ロッドのブランクというものを真剣に考える④ - 初心者のためのシーバスロッド

ロッドのブランクというものを真剣に考える④

 13,2016 13:42
カーボンの弾性とカーボン含有率の話。


中々退屈な記事に仕上がっています。



カーボンシート=プリプレグと呼ばれるカーボンロッドの原材料には、原材料の段階でのスペックがあります。


シートの厚みであったり、使用されている樹脂の種類であったり、結合温度であったり、まあ、イロイロです。


樹脂といえば、最近「ナノテクノロジー」なる言葉でカーボンブランクの特性・機能を表すシーバスロッドが増えてきましたが、それは東レの樹脂技術で釣竿メーカーの技術ではありません。それどころか釣竿専用に特化した技術ですらありません。東レの汎用技術です。

↓馬鹿なので意味がわかりませんが、まあ、「東レのプリプレグ全般がよくなりましたよ」的な感じでしょうw
http://www.torayca.com/download/pdf/nanoalloyPrepreg.pdf

メジャークラフト・ヤマガ・ダイワのように「宣伝材料」として積極的に「ナノ」という言葉を使うメーカーもあれば、「ナノブランク」を使用しているのに何かの拍子で口を滑らせるまでその事実に関して沈黙しているメーカーもあります。後者の場合、口を滑らせるような出来事が起きないかぎり、ユーザーは自分が実は「ナノブランク」を振っていることを知りません。
何故「ナノ」の使用を表にださないかというと・・・・それは素材の進化であってロッドビルディングの進化ではないからでしょう。
素材メーカーの技術の進化であって、釣竿メーカーの技術の進化ではないのですから、「ナノ」を語るのは虎の威を借るような感じがしてロッド屋としての矜持が許さないのかもしれません。
もしかしたら面倒くさい(笑)だけなのかもしれません。

せっかく東レが出てきたので、以後、この記事では東レのカーボンをモデルとして語ることにします。
(プリプレグを供給している素材メーカーといえば東レと三菱レイヨンと帝人(東邦テナックス)がトップスリーの模様)
釣竿向きと東レが用意しているプリプレグは10℃以下の冷蔵状態で最大45日間保存が効き、窯で焼く際には130度で結合するもので、一般的な売り方は100m巻きだそうです。

余談ですが「100m分のカーボンを45日で消費しないといけない」というのが実はロッドメーカーにとって大事なポイントで、そのプリプレグを使うロッドが1種類しかない(プリプレグの共有をしない)ならば自動的に製造数が決まりますし、45日以内に100m分を全て焼き上げるとなると、そこから逆算して必要なマンドレルの数が決定されます。


話を元に戻します。
プリプレグのスペックの話です。

厚みやら、樹脂の種類やら、そういうのは専門家にまかせるとして、我々一般アングラーがよく話題とするのは「トン数」と「カーボン含有率」。

カーボン含有率は理解できますが、「トン数」は実はなんのことやら全く知らないので、調べてみました。

(中略)

ええ、ごほん、えへん、つまりですね・・・

トン数というのは「引張弾性率」・・・詳しくは省きますが、そのカーボンが引張に対してどれだけ強いのかを表す単位です。
本当は「○○t/mm^2」←こういう単位がつくものですが、やがてトン数だけが抜かれて使われるようになった模様で、一番簡単に言えば「どれだけ硬いか」を表す指標です。
硬いと感度が高くなり、また、カーボンの場合は硬くしようとするとレンジを減らすのが手っ取り早いので軽くなる傾向があります。
ついでにいうと折れやすく、脆くなるという副作用もあります。

東レの場合:

・24t
・30t
・35t
・40t
・46t
・50t
・55t
・60t

以上の弾性の違うプリプレグをラインナップしています
数字が低いと低弾性
数字が高いと高弾性

一般的なシーバスロッドだと、24t(もしくはそれ以下)を低弾性、30t~35tを中弾性、40t(もしくはそれ以上)を高弾性と呼ぶようです。
が、困ったことに釣竿業界では何トンから何トンまでのプリプレグを使っていれば低弾性というべきか、何トンから何トンまでのプリプレグを使っていれば高弾性というべきか、明確な規定もなければガイドラインもありません。
また、その割合についても規定がありません。「中弾性9:高弾性1」のロッドでも「高弾性ロッド」と呼ぶことに詐称性はありません。
なので24tを中弾性と呼ぶことは可能ですし、30tを高弾性と呼ぶことも可能です。人やメーカーによって定義が異なるので、「高弾性」や「中弾性」なる抽象的な言葉が出てきた場合は参考程度に止めましょう。
46tの素材を使用していると公言しているメーカーがあるので、46tの高弾性まではシーバスロッド界で使われていることが確認できていますが、50t以上の所謂「超高弾性」の使用は聞いたことがありません。
もしかして存在するかもしれませんが、一般的にはシーバスロッドの性質には向かないようです(鮎竿なんかに合う)。

ちょっと難しくなったので、もう一度復習します。

・トン数とは弾性の違いであって、カーボンの良し悪しの指標ではない
・弾性が高ければ感度がよくなるが曲がらない(折れやすい)
・弾性が高ければ低レジンの傾向があるので軽くなる
 (高弾性=低レジンではないことに注意)
・低いと感度はないが曲がる(折れにくい)
・弾性が低ければ高レジンの傾向があるので重くなる
 (低弾性=高レジンではないことに注意)
・一般的には低弾性24t 中弾性30t 高弾性40tといわれる
・しかしそれは定義ではない
・シーバスロッドは複合弾性が使用されるケースもあり、90%の低弾性メインマテリアルに10%の高弾性補助マテリアルを使って「高弾性ロッド」と名乗るのも可


ここで一番重要なことなのはトン数というのはカーボンの弾性であるということ
カーボン含有率とか、カーボン繊維の量ではありません。


つまりダイワのHVFとかSVFとかZSVFとかは「低レジン」の技術であって、「トン数」にはまるで関係ない話なのです。
低レジンであることは間接的に高感度につながりますが、極端な話をすると、高弾性だからといってかならずしも低レジンとは限りません。
現に、東レの場合、30t/35tで40tより低レジンのプリプレグがラインナップに存在しています。

http://www.torayca.com/lineup/product/pro_003_01.html

トン数が高くて高弾性であるということは「低レジンである=軽い」という傾向があるだけで、必ずしもイコールしないことがわかります。

プリプレグは

・カーボン繊維
・レジン(樹脂)

から成り立っており
ブランクの性質というのは、その2つの要素が合体した状態の話なのです。
トン数、つまり弾性というのは、プリプレグの中の炭素繊維密度の高さや樹脂の量の少なさの話ではない、ということです。




さ あ 、 盛 り 上 が っ て き ま し た !




ここでニワカにクローズアップされるのが”レジン”・・・つまりは樹脂の存在です。
上記リンクのスペックを見ると、思いの外、レジンの量が多いことに気が付きます。


炭素繊維:樹脂
67:33
76:24


東レの場合、殆どのプリプレグがこのどちらかの割合ですね。
カタチを形成し、それを結合させるために必要なものなのでしょうけれど「意外と多いかも」というレベルを越えています。

ぶっちゃけ、めちゃくちゃ多くないですか?樹脂。

だって、ほとんどのロッドの説明書やメーカーHPなんかには大抵99%とか、98%とか、「粘りそう」な感じがするカーボンロッドでも90%前後のカーボン含有量が表記されていますよ。
不思議に思って調べてみると

http://www.jaftma.or.jp/koutori/kiyaku/zairyo.html

使用繊維の含有率(体積比)*を表示します
*竿全体の繊維体積比
使用繊維重量(使用繊維を重量割合で表わしたもの)を密度で割り、使用繊維体積に換算し、その使用割合を表わしたもの。



・・・うむ。
わからん。

自分には意味不明ですが、協会会員には算出するための魔法の方程式が知らされていると推測します。
カーボンは軽く、樹脂は重いので「重量比」の76:24が「体積比」の99:1に変わるのかもしれません。


ここで唯一わかることは、東レから仕入れたカーボンシートに含有するレジン量(重量比)は書かなくてよい、ということです。



全国釣竿公正取引協議会の会員メーカーならば

それぞれ別の仕様のロッドがA~Dまであるとして

A) カーボン99%
B) カーボン90%
C) カーボン85%
D) カーボン70%

こういう表記をすることになりますが、残りの素材の率は書きません。
カーボン以外の素材が書かれていない、残りの1%なり10%なり15%のマテリアルは

「ブランクの繊維ナントカカントカ率を密度やら体積やらの魔法の式で算出したもので炭素繊維ではないと除外されたもの」

・・・つまりはレジン(樹脂)率というわけです。

別の言い方をすれば、残りの素材は決して「グラス素材」の含有量ではないのです。

E) カーボン70%グラス30%

このロッドのように別の素材率を書かねばならないのは、カーボンシート以外の素材を巻きつけているロッドです。
グラスでなかったらボロンでしょうね。



知ってました、これ?


自分は知りませんでした。


× 表示されているカーボン率が低い=グラス素材の割合が多い=粘るロッドだ

○ 表示されているカーボン率が低い=樹脂の割合が高い

○ 樹脂の割合が高い=レジン含有率が高い低弾性素材を多く使った可能性がある

○ 表示されているカーボン率が低い=必ずしも低弾性というわけではない
(その傾向が強いというだけ)


○ 低弾性素材を多く使った=曲がって粘るロッドだ

※ただし、樹脂の割合が高いから粘るわけでもなく、曲がるわけでもない・・・低弾性素材の副産物として樹脂の割合が多くなっただけで、直接の因果関係にはない※

○ 表示されているカーボン率が低い=相対的に重いロッドだ



結論としては、一般アングラーからすると、メーカーが表示している「カーボン率」から読み取れることは、ほとんど無い。
ほとんど無い上に、その数字はロッドの性格やカーボンの性質を表さない。
・・・・ということです(笑)
弾性、つまりトン数は表示義務がありませんので、主にメーカー側の開発裏話なんかで漏れてくるか、宣伝目的として「バット部に○○トンのナントカ弾性カーボンを採用したことにより云々・・・」として公開されるかのどちらかです・・・・
が、これもまたその目的や部位や使用比率が明確になっていない限り、「○○トン」という数字からロッドの性格を精密に把握する材料にはなりません。


「カーボン率が低いからグラス素材が使われているのだろう、だから粘るロッドだろう」


なんてことを口にだすと、とんでもなく恥ずかしいことになるかもしれないので、ご注意あれ・・・・・





購入前のロッドがどういうロッドであるか、スペック表から把握することはほとんど不可能なのです。

「傾向」は読めますが、「テイスト」は実釣で投げて喰わせて曲げて釣り上げるまでわかりませんし、その使用感が与えてくれる感動も予測不可能です。

多くのロッドを所有して多くのシーバスを釣ってきた人ほど、「傾向」という情報からどんな感じのロッドなのか察しがつくようになってきますが、初心者ほど「ワオ!高弾性!凄い!」なんて、スペック読みが分かり始めたことの喜びにハマってしまって近視的発想に陥りがちです(問題は常に「ワオ!高弾性!」の機能が釣りにどう関係するかです)。

”カーボン率99%、40トン高弾性ブランク使用で感度ギンギン、パワー・トルク・しなやかさ・繊細さを備えたNEWロッド!”

↑ありふれたフレーズです
シーバスロッドが100本あったら99本がこんな感じで表現されますが、こんな文句にはあまり意味が無いということは覚えておきましょう。







オマケ:

ダイワのカーボン技術話

http://www.nippon.com/ja/features/c00518/

ダイワでは、標準品に加えて、素材メーカーとの開発協力による特注カーボンシートも採用している。
ただし、樹脂は繊維同士をつなぐ接着剤の役割も担っているため、樹脂が少ないほど加工は難しくなる。極端に樹脂の量を少なくした特注のカーボンシートを、きちんとパイプ状に加工できる高い製造技術がダイワの強みだ。


一応、大ダイワ様のカーボンシートは注文の段階で他社とはすこし違うみたいです・・・
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Comment 5

2016.01.13
Wed
19:36

 #-

URL

No title

樹脂含有率ですが76:24というのは重量比で、ロッドメーカーの%表記は体積(かさ?)の比率の表記ではないでしょうか?
カーボンはひじょーーに軽い材料ですので、他の素材が1%でも2%でも含まれると、重量比は76:24や67:33といった具合に大きく変動するのではないでしょうか?

専門的な知識を持っておられる技術者が記事やこのコメントをを見ていたら、ほくそ笑んでいるかもしれませんね…w

編集 | 返信 | 
2016.01.14
Thu
22:38

pacotaka #-

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毎回楽しく読ませて頂いてます。私もたまに釣りブログなど書いてまして、ぼらおさんの更新頻度×1記事への熱量はただただ脱帽です。

当方文系プロパーなので色々難儀する内容でしたが…引張弾性率とは、例えば輪ゴムをカットして直線にしたものを一定の断面積になるまで束ねたときの、引っ張りに対する強さ…というような理解でいいんですかね。

あと、ぼらおさんとは異なる見解になりますが、トン数はプリプレグそのものの強さではなく、プリプレグを構成するカーボン繊維の強さを示しているのではないでしょうか?

編集 | 返信 | 
2016.01.14
Thu
23:42

ぼらお #-

URL

Re: No title

> 樹脂含有率ですが76:24というのは重量比で、ロッドメーカーの%表記は体積(かさ?)の比率の表記ではないでしょうか?
> カーボンはひじょーーに軽い材料ですので、他の素材が1%でも2%でも含まれると、重量比は76:24や67:33といった具合に大きく変動するのではないでしょうか?
>
> 専門的な知識を持っておられる技術者が記事やこのコメントをを見ていたら、ほくそ笑んでいるかもしれませんね…w

あ、多分それが正解でしょう

編集 | 返信 | 
2016.01.14
Thu
23:45

ぼらお #-

URL

Re: タイトルなし


> あと、ぼらおさんとは異なる見解になりますが、トン数はプリプレグそのものの強さではなく、プリプレグを構成するカーボン繊維の強さを示しているのではないでしょうか?

これも正解っぽいですの

ちょっと訂正をば・・・

編集 | 返信 | 
2016.10.15
Sat
23:11

ぼけぼけ #m6o9brOE

URL

カーボン含有率

カーボン含有率とは、カーボンとグラスなどレジンを除いた部材の体積比率です。ボロンや、ウィスカーなどカーボン以外の素材も含まれます。

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