オーパ! - 読書

オーパ!

 02,2016 20:59
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この本を初めて買ったのは・・・何時の頃だったか覚えてないけれど・・・「105円」で買った記憶がある。

暇つぶしで買って、人にあげて、また読みたくなって買って、また誰かに・・・

今の文庫本は多分、4冊目だと思う。

何故こうまで同じ本を買い求めてしまう(内容はホトンド丸暗記してる)のかというと、これが開高健の最高傑作にして、日本のルアーフィッシングに対してもっとも影響を与えた書籍だからだろう。

全てはここから始まった。





開高健は日本にスポーツとしてのルアーフィッシングを紹介した第一人者として知られる。

この「オーパ!(1977)」は開高の釣行紀として最初のものというわけではなく、唯一のヒットというわけでもない。

1960年代から釣り紀行を書いていた開高は、アングラーとして初期の釣行紀を「私の釣魚大全(1969)」としてまとめ(この本には日本の淡水ルアー・・・特にバスフィッシングの黎明期の事情がよく描かれている)、それからアラスカのキングサーモンとの格闘と世界一周の釣り旅書いた「フィッシュ・オン(1974)」で既に盤石な”釣りエッセイスト”の地位を固めていた。

ところが、アングラーとしてアマゾンに挑んだこの本は、開高が書いたそれらの他の釣りエッセイ本とは明らかに一線を画している。




どこが?
何故に?




それは本が与えた影響力の差だと思う。

「私の釣魚大全」にしても「フィッシュ・オン」にしても、”釣り好きが読む本”あるいは”開高健ファンが読む本”の域を越えていない。
ところが、この「オーパ!」は1977年に刊行されて以来、この本が日本のルアーフィッシングを形つくったと言っても過言ではないほどのインパクトを遺した。

この本がなければ、恐らくほぼ全ての日本のルアーフィッシングの「メーカー」だの「プロ」だのが存在しなかったか、或いはもっと矮小な形でしか存在しえなかっただろう。
活字とは無縁の金髪のオラついた「テスター」の類でさえ、(彼らが開高健と「オーパ!」の存在を認識してなくとも)存在しえなかった。

無論、今現在ルアーフィッシングを楽しむ多くの人も淡水だろうが海水だろうがその影響下にある。
「オレは開高の影響なんか受けてない!」という人もいるかもしれないが、手にしているロッド、リール、ルアー、その全てがやはりバタフライエフェクト的に開高健の影響で発達したものだ。

何故この本が、それほどの影響・・・今で言うなれば「国民的ムーヴメント」・・・を日本社会に対して与えたのかといえば、当時の釣り人口が現在より格段に多く(2015年現在の釣り人口は800万人を切っているが、かつては2000万人+の釣り人口がおり、釣りは現代より身近なレジャーだった)、開高健ほど著名な人物の釣り紀行は今より遥かに多くの人の目を捉えたことであろうことは間違いない。エッセイとして純粋に面白い。

・・・が、それだけではない。

小説家として事実上”終わっていた”開高がブラジルのアマゾンを目指すことになった経緯、「人喰い怪魚」として知られるピラーニャの真の姿、ピラルクーを仕留めんがために奮闘する顛末・・・
最初から最後まで「アングラーとして」ではなく「日本人」として共感してしまう・・・いうなれば「日本人のサガ」を感じさせてしまう語り口と、その対極としての美しい写真(全てフルカラー)が今も昔も「釣り物」という枠を越えて訴えかけるからではないか、と。
純粋な釣りエッセイであるが故に、そこに書かれている出来事は日本と日本人を客観視するための「フィルター」となり、本を通して自己投影をするからではなかろうか、と。

大人達がオーパ!から現実からの逃避、原始的自然への憧れ、巨大魚、怪魚・・・という「冒険要素」と「結局は日本人」という矛盾を感じた一方で、少年達はルアーフィッシングに純粋な憧れを抱くこととなる。
ある少年は技術者となって日本の釣具をより世界的なものとするために奮闘し、ある少年はバスフィッシングの愛好家を経て自分の釣具会社を興すまでになり、ある少年はアマゾンを夢みて実際に”開高が知らなかったアマゾンの釣り”を発見したりすることとなる・・・

読む側の年齢や立場や思考の変化によってこの本を読むことで発見する事がそれぞれ違うのだ。

釣り物として楽しむ・・・

自己を投影する・・・

憧れを抱く・・・

だから何度読み返しても飽きず、手元になければまた買い求めてしまう本になっている。
だから40年経った今でも、釣り文学の金字塔としてそびえ立っている。

この本は、言うなれば・・・・インターネットがなかった時代に開高が自分の足でアマゾンをアナログ的に「検索」して「実行」した顛末記。
もしまだ読んだことがないというルアーアングラーがいたら、ルアーを1個買い足す前にオーパ!を一度読むことを勧めます。
ドヤ顔ブツ持ちして「厳しいコンディションだったけれども○○だから釣ることができた嬉しい一匹です」なんてことを飽きもせずに毎回書いている人には、是非。

ちなみに自分が好きな一節は南米の「黄金の鮭」ドラドが大フィーバーした際の記述。
記憶に残るような大フィーバーがたった3ページ・・・いや、2ページに簡潔に収められていること。
ドラドが過ぎ去った直後は放心状態だったのに、別方面にいてドラドを釣れなかった仲間を真に思いやること・・・・



追記:スポーツザウルス創業者の則弘祐氏が開高健を追悼して書いたエッセイ

「アイ・リメムバー・ケン・カイコォー」

http://saurustrain.jp/essay/nori24.html


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Comment 10

2016.02.02
Tue
21:52

貧弱 #-

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No title

挿絵がないと未だに読めない…。読もうかな…。
開高健さんはサントリーのウイスキーのCMでしか見た覚えがありません。
いーぺぃいーぺぃ、ふーいーぺぃ とか言ってたやつ。
西山徹さんが幼い私をwktkさせてくれた人でした。
あとはビル・ダンス。

編集 | 返信 | 
2016.02.03
Wed
01:07

ぼらお #-

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Re: No title

> 挿絵がないと未だに読めない…。読もうかな…。
> 開高健さんはサントリーのウイスキーのCMでしか見た覚えがありません。
> いーぺぃいーぺぃ、ふーいーぺぃ とか言ってたやつ。
> 西山徹さんが幼い私をwktkさせてくれた人でした。
> あとはビル・ダンス。

写真はめっちゃ多いですよこの本!

開高(1930年生まれ)は、西山徹氏(1948年生まれ)やザウルスの則弘祐氏(1945年生まれ)より一回り半上の世代になりますか・・・ルアーフィッシングのパイオニアともいうべき人たち全員が鬼籍に入っているのは偶然ですかね・・・

編集 | 返信 | 
2016.02.03
Wed
01:48

カカロット #-

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私も好きですこの本、開高健の本は全て持ってます。
こんなふうに取り上げて貰って、なぜか私まで嬉しくなりますね^ ^

編集 | 返信 | 
2016.02.03
Wed
06:18

くろたろう #uaIRrcRw

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No title

初コメです


釣りブログ論から拝見させていただいております。
密度のあるブログを書かれていますね

いい意味で釣りブログらしくない感じが面白いです。

これからも楽しいブログを続けてください
時々拝見させていただきます。

編集 | 返信 | 
2016.02.03
Wed
22:10

エイジ #-

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私も小学生の頃に読んでアマゾンに憧れたりしましたが、歳を取ってから読むとまた違う側面に目が行き、本当に深い作品だと思っています。
ベトナム戦争を体験した開高さんが水面に見ていた物は何だったのかな?とか、今でも深夜の水辺で想う事もあります。釣れない時とか(笑)

編集 | 返信 | 
2016.02.04
Thu
13:48

まっつー #-

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オヤジが釣りなんてしないクセにコレを持ってた理由、やはり少年心をくすぐったんでしょうね。

当然ボクも読み耽り学校で意味も無く「オーパ!オーパ!」言ってた時期がありましたが先生から見ると非常に残念な小学生でしたw

編集 | 返信 | 
2016.02.04
Thu
17:33

ぼらお #-

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Re: タイトルなし

> 私も好きですこの本、開高健の本は全て持ってます。
> こんなふうに取り上げて貰って、なぜか私まで嬉しくなりますね^ ^

励みになるコメントありがとうございます!
全集とまではいかないまでも、自分も開高の釣り関係は全部もってますよ!

編集 | 返信 | 
2016.02.04
Thu
17:34

ぼらお #-

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Re: No title

> 初コメです
>
>
> 釣りブログ論から拝見させていただいております。
> 密度のあるブログを書かれていますね
>
> いい意味で釣りブログらしくない感じが面白いです。
>
> これからも楽しいブログを続けてください
> 時々拝見させていただきます。

あざーっす!

まぁ、でも、あまり(中身を)期待せずに更新をお待ち下さい!

編集 | 返信 | 
2016.02.04
Thu
17:35

ぼらお #-

URL

Re: タイトルなし

> 私も小学生の頃に読んでアマゾンに憧れたりしましたが、歳を取ってから読むとまた違う側面に目が行き、本当に深い作品だと思っています。
> ベトナム戦争を体験した開高さんが水面に見ていた物は何だったのかな?とか、今でも深夜の水辺で想う事もあります。釣れない時とか(笑)

若い人には憧れを与えますけど、ある程度の人生経験を積んで読んだら違う味がでてきますよね・・・

編集 | 返信 | 
2016.02.04
Thu
17:37

ぼらお #-

URL

Re: タイトルなし

> オヤジが釣りなんてしないクセにコレを持ってた理由、やはり少年心をくすぐったんでしょうね。
>
> 当然ボクも読み耽り学校で意味も無く「オーパ!オーパ!」言ってた時期がありましたが先生から見ると非常に残念な小学生でしたw

オッパイ!オッパイ!

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