もっと遠く!(上) - 読書

もっと遠く!(上)

 26,2016 17:59
開高健のアマゾン遠征記「オーパ!」から数年後

物語は「南北アメリカ大陸を釣りしながら北から南へ、アラスカからマゼラン海峡まで横断」というネタを週刊誌の編集長にポロリと口にしたことから始まる

「もっと遠く!」(上・下)はその北米編
「もっと広く!」(上・下)はその南米編

アラスカでサーモンを
砂漠の湖でブラックバスを
ニューヨークの船上でストライプドバスを狙う


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個人的には、この「もっと遠く!(上)」こそがシリーズ全四巻中、もっとも面白い巻だと思います。

「オーパ!」の成功で小説という呪縛から(完全ではないにしても)逃れることができたこの頃が、釣り人としてもエッセイストとしても一番エネルギーに満ち溢れている頃だったのではなかろうか・・・?
この企画はスポンサーの存在もあってか資金に余裕があったらしく、2台の四駆と5~6人の若いスタッフを開高が率いる形をとった。


サントリーの有名なCM・・・開高のフラッグストップは「もっと遠く!」からである(サントリーがスポンサーした)




自分より10歳も20歳も若いスタッフ達・・・しかも全員釣りに無知な若者を引率する形になったのがよかったのかもしれない。
開高からは「俺が釣らねば」という強烈な意志は感じられず、彼らに釣りを教えその成長を楽しんでいるという姿が垣間見えて微笑ましく思えます。
年齢的な要素もあるけれど、恐らくアングラーとして「結果が全て・・・何としても釣らねば」という低いレベルから脱していたのがこの頃であったのだろうと邪推します。


釣りジャンルの文章は・・・たとえばこのように



「オラァ!1匹!オラァ!!2匹!!・・・オルァラァ!!!デカイ!!!!○○cm」



・・・なんてガッついて数自慢しても・・・あるいは大物自慢をしても、書いた本人以外は読んでもさほど面白いと感じないものですが、その手の見苦しさが文面から完全に消えており(元々そういう文を書くタイプではないが)読み手に爽やかな印象を残してくれます。


ほんの数日前までキャストすらロクに出来なかったスタッフが湖でトラウトを爆釣する・・・・そして「ルアー釣りって簡単だな」なんて大それたことを言う。
それを聞いてニヤニヤする開高。


開高をはじめとする玄人達が「どういうわけか釣れないサーモン」と認識していたサーモンの群れがいる・・・・素人のスタッフ達は常識に囚われずに釣り方を発見し、釣れないと思われていたサーモンを爆釣に持ち込む。
それを自分で試してみてメカニズムの解明に必死になる開高。


NYでストライプドバスを釣ろうとして何度も船でくりだす・・・・すべての試みが完敗だったのでついにゲン担ぎのために○○○をお守りとして貰うためにストリップバーの女の子にお願いにいく開高。



どうです?
面白そうじゃないですか?



でもそんな開高もさほど面白くなかったであろうシーンが一つだけあった(と勝手に解釈している)。



アラスカのサーモン釣りはシルバーをはじめとする数の釣果に恵まれたものの、本命のキングサーモンがいつまでたっても釣れない。

ある日、カメラマンがキングらしい魚をヒットさせるのだが、開高は教え子の竿を取るという行為が嫌だしスポーツマンシップからしてもその竿を受けとりたくない・・・しかし週刊誌の連載という都合上、カメラマンは必要だしキングサーモンも写真も必要ということで交代し、開高がキングを釣り上げる。

その写真は見開きで使われているけれど、開高の顔はどこかしら強張っているようにみえる・・・
「もっと遠く(下)」でビッグサイズのマスキーを釣り上げた時の心から嬉しそうな写真とくらべて、それはもう、一目瞭然。

おそらく「本当は他人が釣った魚」を自分の魚のように使われることが嫌でたまらなかったのだ・・・やっぱりこの辺は芯からのホンモノのアングラーなのだ・・・



え、その写真を見せろって?


まあ、続きは本を買って、ご自分で・・・w


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Comment 2

2016.03.02
Wed
23:37

カカロット #-

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先日は、初コメント失礼いたしました!

記事のタイトルを見て、
キターっ!って、勝手にテンション上がっちゃいました。
『もっと遠く』というタイトルも好きです。マイバイブルです。

編集 | 返信 | 
2016.03.13
Sun
15:38

ぼらお #-

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Re: タイトルなし

> 先日は、初コメント失礼いたしました!
>
> 記事のタイトルを見て、
> キターっ!って、勝手にテンション上がっちゃいました。
> 『もっと遠く』というタイトルも好きです。マイバイブルです。

オーパ!の続編シリーズの『オーパ!オーパ!』がちょっと残念なことになっているので、このシリーズが事実上、釣師としての開高のピークでしょうねぇ・・・
貪欲なエネルギッシュさと経験がもたらす余裕が同居しているのがよくわかります。

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