フィッシュ・オン - 読書

フィッシュ・オン

 01,2016 11:43
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数ある開高健の釣行記の一冊にして、「私の釣魚大全」の次に出た初期の一冊。



「私の釣魚大全」が開高健というド素人が釣りにのめり込んでゆく過程を描いた軌跡とすると、「フィッシュ・オン」は(当時としては極めて珍しい)疑似餌で魚を釣る・・・”ルアーフィッシング”というスタイルを確立しつつある頃の、(アングラーとして)若さとエネルギーに満ちた「挑戦」をまとめた書。

「オーパ!」は押しも押されもせぬ、一種の権威・・・「ルアーフィッシングの権威」・・・となってしまった開高健が未知のジャングル、常識が通用しない大河アマゾンに挑むにあたり、再びチャレンジャーとして挑む姿を映した「ノスタルジア」の物語といえるでしょう。


自分がこの本が好きな理由はやはり・・・・


「立って(自己・あるいは己が志す道を確立して)、惑わなくなった(揺るぎなく、迷わなくなった」


という姿に共感を覚えるからだと自己分析しています。





フィッシュ・オンは


アラスカ・キングサーモン編

スウェーデン・ABU社訪問(パイク&ブラックバス)編

アイスランド・トラウト編

ドイツ・トラウト編

ナイジェリア・フランス・ギリシャ・エジプト珍道中編

タイ・殿下居候編

日本・銀山湖イワナ編



こういう構成になっています。

一番の読みドコロはなんといっても、アラスカ・キングサーモン編。




恐らく、この写真が日本のルアー界の歴史上、もっとも影響を与えた一枚でしょう。





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ABUのアンバサダー



ダーデブルの赤と白のスプーン



横たわるキングサーモン








アラスカの冷気が伝わってくるような、どこからしらモノトーンチックな写真と・・・





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添えられた一行の文章。




40年間


この2ページ以上に、読者にルアーフィッシングへの憧憬を抱かせるような絵・・・否、あらゆるジャンルのコンテンツは、日本に現れなかった。







個人的にはこのアラスカ編を読むためだけにもこの本を買う価値があると思いますが、タイ編やスウェーデン編も、釣りから離れた純エッセイとしても面白く、傑作の部類に属すると言えるでしょう。

人からよく読まれる釣行記を書きたいな、なんて願望がある釣りブロガーにもお勧めします。

読めばわかりますが、一遍一遍はかなり短くコンパクトに書かれていて、

「ドウダ、オレガツッタンダゾ、スゴイダロウ?」

的なクドさ、しつこさを感じさせないような内容になっているんですね。

なにしろ日本で一番読まれている人の釣行記なので、これを参考にしない手はないでしょう(笑)







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尚、本の中では「小説家・開高健」の最期が「日本・銀山湖イワナ編」として散文的に、描かれています。


小説を書くために一夏、秘境の掘っ立て小屋を借りて山ごもりした開高健は結局1ページも書けずに終わります。


釣ったイワナの数は合計31匹・・・3ヶ月間の釣果にしては少なすぎるので、やはり、書けない苦悩が先に立って、釣りにもあまり集中できなかったようです。


その辺の事情は、本人が後のエッセイなどで小出し小出しに漏らしたものや、たまたま同じシーズンの銀山湖で居合わせた元スポーツザウルス社長の則 弘祐氏による開高健追悼エッセイ「アイ・リメムバー・ケン・カイコォー」などで窺い知ることができますが・・・




断言します

この「日本・銀山湖イワナ編」は開高文学史上最高の作品です。






開高健本人は気がついていないようですが、この「日本編」は「書けなくなった小説家を描いた私小説」なんですよ。


日本編最後の3行は一見、爽やかな印象を読者に与えるシーンのように受け取れますが、開高健の内心を慮ってみると、なんとも暗喩的であります。

ドロドロした誰にも打ち明けられぬ書けぬ苦しみ・・・「小説家」の葛藤を、「アングラーの行動」として美しく描写することによって、「日本編」は小説的な解釈にのみよって理解されるものになりました。

このコントラスト・・・いや、「矛盾」を書けた時点で、小説は成ったのです。



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Comment 3

2016.05.01
Sun
18:32

貧弱 #-

URL

〉ABUのアンバサダー

呼ばれた気がした(汗
未だにバスで使っていた4601で投げてます。

本来は舟小物用みたいですが、二十代でバスを再開した時のお手本が下野プロだったのと、使い勝手の良さで酷使してます(ぼちぼちメインギアが滑ってヤバい…)。

正しくはカゴ釣りのオイチャンみたく5000番、6000番代の『ロケット』を使えば
磯ヒラも狙える武田式でオットコマエになるんですが。

編集 | 返信 | 
2016.05.05
Thu
10:54

ぼらお #-

URL

Re: タイトルなし

> 〉ABUのアンバサダー
>
> 呼ばれた気がした(汗
> 未だにバスで使っていた4601で投げてます。
>
> 本来は舟小物用みたいですが、二十代でバスを再開した時のお手本が下野プロだったのと、使い勝手の良さで酷使してます(ぼちぼちメインギアが滑ってヤバい…)。
>
> 正しくはカゴ釣りのオイチャンみたく5000番、6000番代の『ロケット』を使えば
> 磯ヒラも狙える武田式でオットコマエになるんですが。

この時代のABUは海水に弱かったみたいですが、はたして開高健は自分で分解メンテナンスができていたかどうかが気になってしまいます・・・

いや、かく言う自分も未だにスピニングの分解メンテナンスが出来ないんですが・・・

編集 | 返信 | 
2016.05.05
Thu
18:16

貧弱 #-

URL

連投すんません

今のロープロを使った(買った)事がなく、真のオールドタックルも試してないので
あまり偉そうなことは言えませんが、丸型の、殊にABUは機構が単純で、ブラスギアもメンテで『油断』しなければ海でもガンガン投げられます。

マイナスとペンチ(純正のレンチで十分)、
あとミシン油(防錆・潤滑)があれば現場でもメンテ出来るくらいです。
唯、ばらす前は塩分除去の為に真水が要りますが…。

故・開高氏も滞在先でも巻き替えついでにいじられたんではないかと(笑)。

ギミックや肉抜きが多いと専用工具や分解時にパッドが要るもんですが、
昔のは単純≒頑丈で多少ガワが傷ついても落とさん限り壊れないので有り難いです。
(収集家ではないので機能に支障のない傷は『味わい・趣』と認識してます。)

相変わらずハンドルが固定でスピニングのように融通が利きませんけどね(笑)。

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