シーバス(スズキ)って美味しい魚なの?①

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非常にデリケートな話題です・・・

というのも、スズキは本来美味しい魚なのですが

・地域差(水質差)
・個体差
・季節差

が非常に大きな魚で、しかも繊細な白身肉なので、声高に「スズキは不味い」といって憚らない人たちが存在するからです。

でもよく考えると旬の時期からハズレた魚工業地域の湾奥のドブ川で釣った真っ黒な魚釣ったあとの手当てが杜撰だった魚は魚種を問わず美味しくない可能性が高いわけで、本来の姿のスズキの食味の判定をしないのはいささかアンフェアではないかと思う次第です。


というわけでこの記事の前提はこうなります:
美味しいとされている旬の時期に、綺麗な水質の場所で釣り、美味しそうな個体を見抜いて選び、〆と保冷の手当が良いスズキが使われること



そもそもスズキは高級料亭や高級寿司屋でも供されますし、鯛や鯉と並んで古事記に登場する由緒正しき魚であって、宗教儀式や支配者層に献上されるような魚であった事実からみても不味いワケがないじゃないですか(苦笑)

あ、高級寿司屋で思い出しましたが、かの「すきやばし次郎」は東京湾産の魚は臭う個体が混じることもあるから(逆にいえば美味しい東京湾産のスズキの存在を否定していないことに注目)外海で採れたスズキのみを使うそうです。




スズキの旬が夏ってホント?

ちょっと調べるとまるで判で押したようかのように


スズキの旬はです


みたいなことが主張されていますが、それ、ウソです・・・とまでは言わないまでも、ずいぶん誇張された表現だと思います。

年間数百匹のシーバスを釣り続けることン年、散々スズキを食べてきましたが、夏(6月~8月)が特に美味しいわけではない、というのが持論です。

おそらく次のような理由、主に売り手側の事情でそのような説が広まったものだと思われます。



・時期的にほぼ間違いなく産卵と越冬の体力消耗から回復しているため
5月はまだ個体差が大きい
ただし4月5月で美味しい個体もいる

・まだ次の産卵に備えているわけでもなく卵巣や精巣にエネルギーを取られていることがないため

この時期は未発達
ただし9月末から10月頭にかけても未発達な個体は多い

・その時期の漁獲量が大きくなるため

「接岸状態」のバチシーズンが終わって沖に移動してくれたほうが漁船的には獲りやすい

・夏に避暑のため沖に出ていったスズキは沿岸部に残った個体や川を遡上した個体より質がいいため

夏、水温が上がるに従って頑張って沿岸部に残る個体、川を登る個体、沖に出ていく個体に分かれます
沖で捕れた個体は当分の間、川に侵入していない可能性が高く、したがって独特キツイ臭いがしない率が高い

・淡白な白身肉で涼を感じさせる調理方法に向いているため

“洗い”がその代表

・旨味成分であるイノシン酸の量が夏は増えるため

冬は脂の美味さ、夏は旨味成分の美味さ、っていいますね


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ただ、夏はベイト量がかならずしも豊富であるということはなく、またスズキが特に肥え太っているというわけもはなく、絶対的に美味い時期であるというには難があると思います。



はスズキが美味とされる時期の一つ



程度の解釈がよろしいと思います。


それに一般アングラーが真夏の時期に水質のよいエリア(つまり淡水域および汽水域ではないエリア)でシーバスを釣るのはかなり難易度が高いですしね。

春のスズキ

春(3月~4月)のスズキは産卵後の体力の回復が済んでいない激ヤセ個体や、ヒルに寄生されて痩せ細った哀れな個体が混じっています。

全体的にみて脂が乗っていない個体がおおいので「あまりいい時期ではない」といっていいかもしれませんが、産卵と越冬を終えて接岸する前に沖の深みで十分な餌にありついてから戻ってくる個体もいるので難しいところです。

また、沿岸に戻ってきたばかりの個体は独特の臭いがまったくないので食べやすい、という意外な好ポイントがあったりします。

個人的な体験ですが、4月に釣ったコンディションの良いフッコを刺身で食べてみたら、付けた醤油に薄っすら脂が浮ぶくらい全身に脂が回っていてビックリしたことがありました。

良し悪しを見定める「目利き」がもっとも問われる時期だと思います。

晩春から梅雨にかけてのスズキ

この時期、多くのスズキがバチやイワシなどをもりもり食べてパワーアップします。
従ってここからがスズキの本格的な旬の時期であるといっていいでしょう。


バチ抜けのシーバスは不味いというのは誤りです。


ゴカイ類を主として捕食している美味しい魚なんてゴマンといるじゃないですか。
正しくは


バチ抜けが起こるようなエリアは水質に難がある可能性が高く、そこに居着いてしまったシーバスは臭い


・・・ということです。
つまりバチに付いているスズキが悪いのではなく、バチ抜けが起こるエリアの水質が悪いわけですね。
そういうバチ抜けゾーンであっても入ってきたばかりのスズキは無臭であって、それを見抜くことが出来るのであれば、普通に美味しく食べることができます。
(そういう魚を積極的に食べたいかという議論はまた別の話)


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秋のスズキ

個人的には

産卵に備えて荒食いを始めた9月末~10月中頃のスズキがもっとも美味しいスズキである

と思っています。

特に

「荒食いして太ってはいるけど、卵巣/精巣はまだ未発達の個体」

なんかは非常に美味。

多少肥大化が始まった程度でもかなり美味しいです。

晩秋から初冬のスズキ

水温が下がり始めるのと比例して卵巣精巣が大きく発達していきますが、その事実をもってして「この時期のスズキの肉は味がない」と決めつけるのは性急過ぎます。

結論を先に述べておくとこうなります:


産卵直前の個体であっても十分美味しく食べられる


身がスカスカでパサパサとか、そういう事はありません。

あくまで「脂の乗りの相対性の問題」であって、スズキは身をやつしてまで卵を太らせている訳ではありません。



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本当は身に乗るはずだったエネルギーが卵巣/精巣に配分されていて、その食べっぷり、その太った姿形に相応しいだけの脂が身に乗っていない・・・ということなんです。

ただし、間もなく産卵するスズキをたくさん獲って食べてしまうと次世代のスズキが生まれてきません・・・自分の倫理観と相談しながら食べるか放つかを決めてください。

厳冬期から初春のスズキ

1月末から3月頭頃がスズキがもっとも美味しくない時期です。

というのも、この時期のスズキは産卵を済ませたあとで積極的な捕食活動は控えて、沖の深みで集団でじっと動かず耐えていることが多いからです(まったくの絶食状態であるというわけではなく、そのエリアに餌となるものがやってくると普通に捕食する)。

産卵活動という激務を果たした上で絶食気味で越冬中のスズキが美味しい

・・・なんてことがあるわけないですよね。

「ガリガリに痩せ衰えたシーバス」のイメージ図に当てはまるのがこの時期です。

とはいえ、地域によってはまだ産卵が終わっていなかったり、産卵越冬ゾーンのすぐ近くに有力なベイト群が存在するようなこともあって、冬のスズキの全てが痩せ細っているわけではありません。

スズキには常に個体差と地域差の問題がつきまとう・・・ということです。


スズキの旬のまとめ

・地域差もありますがスズキの旬は4月から11月頃

・ただし“走り”と“名残り”の時期は個体差および地域差が大きい

・スズキはある瞬間がピークというわけではなくフラットに長い旬をもつ

・夏は沖にスズキ(の一部)があつまるので漁船の都合で良いとされる

・秋の荒食いをしているが卵巣精巣はまだ未発達の個体が最強



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次回は「スズキの目利き」について・・・の予定です。
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